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2007年 10月 16日
「当世白浪気質 1―東京アプレゲール」 杉山小弥花
舞台は昭和23年。 戦争が終わりGHQ占領下におかれた東京。 美術品泥棒の吉田虎之助はお宝を探しに山奥まで 出掛けていくが、そこで人形のように美しい少女・千越と出会う。 彼女はその土地の神様の許婚として育てられたが 跡継ぎを残す事が出来ないので、虎之助の子種を 欲しいと言い出す。 断った虎之助は監禁されてしまうのだが・・・ 戦争が終わったこの時期は、色んな事が目まぐるしく変わった 動乱の時期で、良くも悪くもエネルギーに溢れていたような感じがします。 この頃を舞台にした漫画はあまり見たことないような。 京極堂シリーズも戦後しばらくしての話だったと思いますが もうちょっと後だったかな。 戦争が終わったからといって何もかも片がつくわけでは無く 人の心にも戦禍は残る。 平和な時代に生まれ幸せに暮らしてきた自分には 戦争で人を殺した仲間を殺された、なんて世界は想像もつかないんですが、 自分の祖父母はその渦中に居たわけで。 たった60年くらい前のことなのに自分には全然分からないのが なんだか不思議に思えます。 祖父は戦争には行ってませんが毎日仕事から帰る道すがらで 「今日もご飯が無いんだなあ。嫌だなあ。」 と思いながら歩いてたのが思い出深いそうな。 血の繋がった人間が言うとなんだかリアルに感じます。 ただ自分達の今の生活は、祖父母やこの漫画の舞台、昭和23年に生きた人達が 身を削って努力して得られたものなんだと言う事を忘れてはいけないと思っています。 まあ、そんな訳で自分にとってとても興味深い時代なんですが この作品、時代の文化や風俗なんかをよく調べてあるようで 言葉の端々や背景が雰囲気が良く出てます。 露天(ヤミ)ではオヤジがシケモクを売り、 シベリアに抑留された兵隊が作った歌が流行っていたり 子供がパールハーバーの唄を歌っていたり。 ヤクザって戦争には反対する側だったってのは初めて知りました。 そして便衣兵やハルノートなんて言葉が出てきた時には驚いた。 「いくら亜米利加さんが平等って言ってもねえ 女は男に従うものって教えられてきたんだもの 急に放り出されても困ってしまうわ その分守られていた面もあるでしょう 飼い犬から狼に戻れと言われてもどうしていいのか・・・」 と言う漬物問屋の奥さんも居れば 「それにくらべて日本の男はダメね 口に出さないのが美徳だ―とかえらそうに そのくせ戦争負けたこといつまでも引きずってて」 「こちとら米兵相手のBG(ビジネスガール)だっつの!」 という外国人相手の売春婦もいる。 それぞれの立場があり、それぞれの考え方を それとなく描いているところがリアリティを感じたり。 そんな時代の空気感を楽しみつつも一番ニヤニヤなのはやっぱり 虎之助と千越の恋人未満の関係だったり。 そもそも千越は村のために虎之助と関係を持とうとして 「一夜の情けが欲しい」 「私には許婚者がいる 二世を誓えとは言わん」 「しかしトラを見る度 心は千々に乱れ 意に添わない男と 新床を迎える私を哀れと思うなら・・・・・・」 という男殺しなセリフを真顔に棒読みで滔々と語ったんですが 目論みに気づいていたトラにあっさり断られてしまいます。 狼の許婚として育てられた千越は、どこか浮世離れしていて トラを男として好きなのかは微妙なんですが。 トラの方も千越を子供扱いして、ちっとも相手にしないんですが 6話で彼女が杏里にナニかされたと知ったときは、血相変えて問いただしたり。 いーねえいーねえ、このつかずはなれずの関係。 後半ではトラの弟分や、昔の仲間、父親同然の親父さんなんかも登場し なかなかにぎやかになってきました。 絵の方はもうちょっとって感じではありますが セリフ回しのセンスも好きだし、時代背景の詳細さもとても良い。 個人的に久々にヒットな1作でした。 2巻が楽しみです。
by gis-uk
| 2007-10-16 00:48
| Comic
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